<「レイマキ」のこと>
「静香」「不失者」「裸のラリーズ」で、TOKYOのアンダーグラウンドシーンを牽引してきた唯一無二のギタリスト三浦真樹。
そして山口冨士夫トリオで活躍、数えきれないサポートで中央線にこの人ありと言わしめ、現在も「LAPIZ TRIO」で疾走する希代のベーシスト横山玲。
このスーパーなふたりが繰り広げる即興インストゥルメンタルが、すごくないわけがない。目の前に現れる音楽景色は、魅惑的でスリリング、ときに幻想的ですらある。
緊張と郷愁に満ちた世界を描き出すふたりだが、いちどステージを降りると、屈託がなく、話していても、いつも笑いが絶えない。
このギャップがまたかれらの魅力でもあり、レイマキ音楽の秘密だと思う。
今回のインタビュー時の撮影のこと。こちらとしてはシリアスな構図を演出しようとあれこれ試みたのだが、すぐに吹き出したり、冗談をいったりで、なかなか狙い通りにいかない。
そのうちに、レイマキのふたりはなによりも笑っている姿が、一番自然で、その人となりを表していることに気がついた。
こんな素敵な笑顔のひとたちだからこそ、素晴らしい音楽風景を描けるのだと、あらためて知ることとなった、そんな取材現場だった。
北原慶昭
<レイマキの音楽活動について>
真樹:このユニットをはじめたときは「三浦真樹×横山玲」で「マキレイ」だったんだけど、いまは「レイマキ」。
玲:力関係だな。(笑)
真樹:そう、逆転しちゃった。(笑)
玲:「レイマキ」の活動としては、高円寺や阿佐ヶ谷で、ライブをやってます。あと最近はCD-Rを作って、それをちょこちょこ販売したり。
真樹:ジャンルでいうと、うーん、即興のインストかなあ。
玲:最初のライブ(2012年)の映像がYouTubeにあるけど、それは最後の5分くらい。ライブ自体は45分くらいノンストップで、ずーっとふたりで無言でシャカシャカやってるの。
真樹:顔もみないでね。(笑)
<ふたりではじめるきっかけは?>
真樹:玲ちゃんとは、最近‥、最近といっても7、8年くらいまえからかな。
高円寺「ショーボート」の社長に、ソロでライブをやってくれないかってたのまれて。
でもオレはソロでやったことなくて、ソロはちょっとできないからと断ったら、ふたりでもいいということになった。それで、その当時気にいっていた玲ちゃんにデュオやらない?って聞いたら、玲ちゃんもいいよって、それでやることになった。
でもそんとき、なにも考えていなかった。なにやろうかとか、どうしようとか。(笑)
玲: このひと、ずっと「どうしよう、どうしよう」っていっててね。
真樹:ライブの日は近づいてきちゃうし、とにかくスタジオにはいろうということになって、なにも決まってないんだけど、でもなにかできるだろうとは思っていた。
とにかく音だしてみようってはじまったら、もう止まんなくなっちゃって、で、ガーーっと、もうずっとそこから即興で、1時間くらい止まんなかった。
終わって、なんだこれ、できたじゃんって。(笑)
<音楽をはじめるきっかけは?>
真樹:やっぱり女にモテるためだねえ。(笑)
玲:正直でよろしい。で、モテたの?
真樹:それがさっぱりモテなかった。
玲:わたしは、ちっちゃい頃、近所の女の子がピアノを習い始めて、真似して。
<好きなミュージシャン、アルバムなどは?>
玲:レッチリ!
レッチリのコピーバンドをやってたことがあって、そこでずいぶん鍛えられたなと。
真樹:そのときのバンド名が「テッチリ」だもんね。(笑)
玲:高円寺といえば「United Kouenji(ユナイテッド高円寺)」というバンドもやってた。
真樹:オレはファンカデリックとかかな。
いまは中世の音楽に傾倒してますね。13世紀から14世紀くらいの、ヨーロッパの音楽。
「レイマキ」でもやってるんだ。
玲:すっごい練習しても、2分くらいで終わっちゃう。(笑)
即興がメインだからスタジオとかあんまりはいらないのに、その中世の曲のためだけに3時間とかスタジオはいって、しかも何回も。でもすぐ終わっちゃう。(笑)
<高円寺とのかかわりは?>
玲:わたしは高円寺の「稲生座」というLive BARに、1990年とか、もっとまえかな、友だちに連れて行ってもらったんです。何年か経って、自分のバンドのテープを持っていったらマスターがめちゃくちゃ気に入ってくれて、毎晩かけてくれてたみたい。その頃から頻繁に出入りするようになって、いまでもよく行ってます。
真樹:オレは「静香」というバンドで出しているCDに「ショーボート」での録音盤がある。「20000V」でもやってたしね。
玲:あと高円寺といえば、音楽仲間やバンドマンが山ほどいて、高円寺を歩いていると必ずだれかに会う。おお、やあやあって、もうひっきりなし。
前の話だけど、高円寺の南口に、「稲生座」で知り合ったひとたちが住んでいるアパートがポンポンとあって、そこを誰かが「変態通り」とよんでいて、わたしもそこに引っ越してしまって、「変態通り」の一員になってしまった。
12年も住んでしまった。
<これからのこと>
玲:なんかね、真樹さん音楽バカだよね。だからプロデューサーがいたらいいなと。
真樹:そうだね、プロデューサーねえ。どうしたらいいかな。
玲:音楽バカだから、自分の好きなことだけをやっていたいっていうところがあって、そのあたりをどうするかかな。
あんた売れたいとか思ってないでしょ!(笑)
真樹:いや、そりゃ、売れたらいいけど‥。
玲:まあ、わりとゆるゆるとやっていく感じかな。
ちゃんまき(真樹のこと)みたいなギタリストはあまりいないからね、貴重ですよ。このスタイルのまま。だれかはいると大変なので。
真樹:「三浦真樹×横山玲」のときは、もう即興オンリーだったけど、「レイマキ」になって、もう少し曲よりになってきて、そうするとウケたりして、そういう変化はあるね。
<レイマキにとって音楽とは?>
玲:ハハハ、なんだろうね。音楽というか、格闘技だもんね。
真樹:うん。おれらがやってる音楽は、格闘技に近いね。あるいは漫才。
玲:私は芸人だと言われることがある。観客をワッとさせるひとみたいなことらしいけど。もうそういう風にしかできないしねえ。音楽が好きかどうかもわからん。
真樹:オレはもう音楽大好き。心を震わせてくれる。
高円寺「バーミィー」にて 2019.7.22 MON
取材:木澤聡、北原慶昭
写真:小野千明
<レイマキの活動はこちらのリンク先よりご覧ください>
◎ YouTube:三浦真樹 × 横山玲 at 高円寺 ShowBoat 2012/2/13
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