第七回:メビウス

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<高円寺音人の紹介>

 

出会い、ひらめき、縁、そして絆。

音、響き、想い、そして体現。

 

音楽はなんて素晴らしい。

音楽は何故に心を生き方を左右する。

人との出逢いや絆にすら影響を与える。

魂が引き寄せるから?

それともただそこにあるから?

偶然?必然?

それが今であれば、それでいいよね。

 

メビウスは笹山てるおさんと川村絵理さんのユニット。

メビウスの曲を聴いた。話を聞いた。

話を聞く前に聴いた曲が、歌が、とても響く。

そして話を聞いていろんなことを考えた。

考えたこと、それはあくまでも想像かもしれない。

答えはどこにも無いのだろう。

また曲を歌を聴きたいと想う気持ちが答えなのかな。

 

木澤聡

 

 

<「メビウス」結成について>

 

絵理さん:「メビウス」は6年目です。

最初はバンドでやるつもりでいたのがメンバーが上手く揃わず、せっかくやろうってことにしたからアコスティックで、ふたりでやろうかっていうのがキッカケで始まったって感じですね。

笹山さん:元々は仕事場一緒で・・・。

絵理さん:仕事場が一緒で、笹山は元々音楽をやっていた人で、わたしはまったくやってない人で。仕事の活動の中で歌ったりしていて・・・。

笹山さん:障害者の作業所で仕事をしていて、そこで同僚で。そこに通って来る障害者の人たちがバンドとかをやっていて、ボクがそれを仕切ってやっているような感じだったんです。
それをエリ嬢にも手伝ってもらっていて、すごく歌とか歌えるんだけど、ライブハウスとかそういうところでの音楽経験はまったく無い人だった。それが逆にもったいないと思って、仕事場以外でもやろうって話しでやり始めたのがキッカケで、その後もずっと続いているんです。

ボクがギターを弾いて、障害者の人たちと一緒に歌うようなときにエリ嬢も音楽が好きだから参加してて。みんなと一緒に歌っているときとかに普通じゃない歌の良さだから、これだけじゃもったいないってことで。

絵理さん:そんなことは今まで聞いたことありませんでしたけど。(笑)

笹山さん:言ったじゃん!

そのころは一回音楽から離れていたんだけど、一緒に何かやってみようって思って始めたのがキッカケで、だんだん深入りしたってことです。

 

<笹山さんが音楽をやりはじめたきっかけは>

 

笹山さん:ボクが音楽活動を始めたのは18歳のときで、世代的にはパンクですね。
ちょうど「セックス ピストルズ」とか出てきて、たまたまその時期にバンドをやろうってことになって。「東京ロッカーズ」とかイギリスのパンクの影響を受けたバンドが活動していて、ボクらは「絶対零度」ってバンドで活動を始めて、そのムーヴメントの中で居場所ができて、けっこうな場所でライブを演ってましたね。
「ロフト」とか「屋根裏」で、町田町蔵の「INU」とか「ZELDA」とかの当時のアンダーグラウンドなパンクシーンで演ってたバンドと競演していました。

そのころはエレキギターを弾いてたんですけど、まったくそれまではきちんとエレキは弾いたことがなかったから、ほとんど楽器が演奏できない状態でステージに上がるみたいな感じで演ってました。

一番ボクに影響を与えてるのはそこですね。リードギターというのは好きに弾くものだと思ってたから、スケールに合ってるっていうのはおかしいと思ってたんですよ。ブルースとかで合って聴こえるのは「なんで合わせるんだ!」って思ってた。

絵理さん:誰にも合わせない・・・。

笹山さん:誰にも合わせないのがリードギターのアドリブだろって思っていたんですよ、ボクは。
だから好きなように弾いてたらメチャクチャだったけど、それの方が正しいって思っていたところから始まったんで、それは今でもすごく影響を受けてますね。ずっとその考えは変わっていないですね。

 

<だから楽器も結果オーライ>

 

そのあと田村さん(第六回高円寺音人)がいた「THE WEED」にも入ったけど、エリ嬢を引きずり込んでいい歳になってまた始めたんだけど、まったく演って無い人とやりたかった。

絵理さん:「絶対零度」もやって「THE WEED」もやって、今までもひとりでもやってたわけだから、またひとりで始めるよりはなんか違うことをやった方がいいみたいな感覚から、わたしが引きずり込まれた。

笹山さん:「THE WEED」に参加したのも20代後半のときで、それまでやってたバンドで行き詰って、「THE WEED」のメンバーと出会って、今まで一度も演ったことのなかったキーボードのメンバーを探しているって聞いて「オレを入れてくれ」って言って、それからキーボードを演り始めた。

それまでピアノを弾いたことも無かった。(笑)

絵理さん:メチャクチャなんですよ・・。

笹山さん:その後、「THE WEED」は「イカ天」に出てCDを出すことになって、それまでは小さなシンセみたいなのしか弾いたこと無かったのが、いきなり生ピアノで一曲通して弾くことになって・・。
手が届かなくて。(笑)
最初は一個のコードずつ録音したって感じで、手がつるぐらい。サイテーでしたね。

よくクビにならなかったなぁ~って。(笑)

絵理さん:みんな懐が深いね。

笹山さん:プロデューサーからもね「こんなの中学生でもできる」って。(大笑)

オルガンを弾いたときにも、それまでシンセしか弾いてなかったんだけど、ハモンドオルガンを弾こうってことになってスタジオに持ってきて、演ろうってなったときにレスリースピーカーってので音を出すんだけど、それを知らなかったんで、「このでっかいのなんですか?」って。(笑)
これを回転させながら演奏するんだって言われても、回転させるとこっちが手が判らなくなっちゃうから、自分ではできないので、レスリースピーカーのオンオフをベースの吉住くんにやってもらったりとか、メチャクチャでしたね。

よくあれで「THE WEED」をクビにならずに最後までいたってことには、ある意味感謝してます。

 

<だから「メビウス」は>

 

笹山さん:音楽に復帰するときも、ただ自分が演ってた音楽をやって、また演り始めたねっていうのがイヤで、ぜんぜん音楽をやってなかったエリ嬢と始めたときに、人によっては「カノジョ連れ込んで音楽やりやがって、お前ら」みたいなことも言われたんだけど。
ひとりで演れないのかって言われたり。でもオレはそう言われた方がファイトが湧きましたね。

絵理さん:最初はいろいろわたしも言われました。

笹山さん:予想通りのことをやる気は無いので。演ってる音楽自体は今はけっこうポップだけど、姿勢としては最初に音楽を始めたときとほとんど変わってないなと。

「メビウス」では基本的には曲と詩はボクが作ってきましたが、今はエリ嬢もすごい意見を言うから、エリ嬢が歌えないような世界を、ボクが無理やり演らせるって気持ちは無いです。
エリ嬢が納得して歌えるような曲じゃないと、演る意味が無いから。エリ嬢と相談しながらやってきています。

絵理さん:最近は・・そんな感じです・・。

 

<絵理さんの音楽とは>

 

絵理さん:音楽は特別にまったくやってませんでした。

わたしは元々体育会系で育ってきてるから水泳、バスケ。高校まではずっとバスケを続けてきました。でも音楽は好きで、歌ったりとかは前からも好きでした。ちっちゃいころはピアノも習ってて、音楽はまったくってことではなかったんですけど、音楽は聴く方で演る方では無かったですね。
歌うのは好きでしたから、みんなとカラオケに行ったり、趣味で歌ったりするでしょうけど、まさか自分が人さまの前で歌うことになるとは思ってませんでした。
それこそ人から比べたら相当遅咲きなんで。

障害者の作業所で歌ってたときも、わたしが前に出てきて歌うってことじゃなくて、みんなと楽しく歌うってるってだけだったんですよ。そんなときにそれなりに歌えるヤツだなって思ってくれたんでしょうけど、そこからが始まったので。

好きなミュージシャンとかも、ホントにわたしが言うと鼻で笑われそうなんですけど、わたしは歌謡曲で育っているので「ユーミン」とか「サザン」とか「山下達郎」や「佐野元春」とかのメジャーどころをずっと聴いてたんですよ。田舎育ちですから。(笑)
田舎なんてレコード屋も無いし、楽器屋さんって言っても学校で使う楽器しか扱ってないし。ほとんど音楽聴くところって言ったらテレビの「ベストテン」「トップテン」ぐらいしか無かったから。

そんな環境だと自然と聴くのは邦楽中心で、洋楽も聴いてましたがそれも「ホイットニー ヒューストン」とかの有名などこでも耳に入るような曲ばかりでした。

だから最初にこんな曲って聴かされたときには「ヘッ?」って感じで、ジャンル的にそんな曲とかで育ってきたわけじゃないから、音楽性がまったく正反対ぐらい違うわけですよ。

笹山さん:それもあるけども、エリ嬢を高円寺に連れてきたときに、高円寺の周りの人間ってみんな音楽をやっていて、彼女が好きな「ミーシャ」とか「ホイットニー ヒューストン」「マライア キャリー」なんてまず出てこない。いないじゃないですか。だからそれも良くて。(笑)
みんなマニアな音楽のところにいっててそんな話になるけど、エリ嬢がメジャーな曲が好きで音楽をやってるって言うと、みんなその次の言葉に詰まったりして・・。それが楽しくって。(笑)

絵理さん:マニアックな曲も聴かないわけじゃなくて好きなんですけど、育ってきたのが歌謡曲なんで~。

 

<「メビウス」の有り方>

 

笹山さん:作る曲のコンセプトは、基本的にはエリ嬢からの話を聞いて、エリ嬢の体験したことをボクが歌にしたりとか、それは意識して演ってます。
ボクの世界観をエリ嬢に歌ってもらうようなことは無いですね。

絵理さん:それは最初から無かったです。

笹山さん:だからエリ嬢にはポップな判りやすい世界を演ってもらって、その分ボクは自分のドロドロしたところは歌いやすくするとか、「光と影」みたいなことを意識して演ってますね。
暗い部分を自分だけで演っていたら、聴いてる人がイヤになっちゃう。(笑)

絵理さん:確かに笹山の世界観はわたしには歌えないし、わたしの世界観を笹山が歌っても上手く伝わらないだろうから、「光と影」「白と黒」、180度違うみたいなところがあってよかったというか。
それもありつつ「グレイ」というか混ざったところがある。

笹山さん:そこが両方あるって感じをやりたかった。そこが活きてるのがいいかなって。

 

<少しずつ「メビウス」になる>

 

絵理さん:6年間やってきてすぐにそうなったわけではなく、最初は作った曲と歌詞を「はいっ」って渡されて「歌ってね」って感じできて。わたしも最初は何も判らないから何していいか判らないじゃないですか。
だからもらったものを忠実に歌う。そこから始まっているから何の面白味も無いと思う、聴いている人も。

最初はステージに立つのが本当にイヤで、慣れないし判らないからステージに上がっても言われた歌を歌って「ハイ、ありがとうございました」みたいな感じで、聴いてる人は「なんだコイツ」ぐらいだったと思う。
それも回数を重ねていくとこ慣れてくるし、それも判ってくるから、言われて演るだけじゃなくて自分でも何かを演らなければなっていうのが、教えてもらうわけじゃなく、だんだん自分の経験でも判っていく。
歌詞にも曲にも、自分がこうして欲しいという意見を徐々に入れていくようになる。

そうできるようになったのは3年目ぐらいからかなぁ~。

笹山さん:エリ嬢は割りと自分のことを話すから。エリ嬢は恋多き人なんでエリ嬢の失恋したときの歌とかをボクが作った。

絵理さん:そう!わたしの話を・・。
それを歌ってステージで泣いて。いい曲で、いい歌詞だなと思って歌ったら、感情が入りすぎてステージでボロ泣きしてしまった。再現性がすごかったのもあったけど、そのあたりから自分の中でもいい歌が歌えるようになったのかなって思えるようになって。

だんだん自分の意識も変わってきたかな。

 

<高円寺の「メビウス」>

 

笹山さん:高円寺でメインに演るようになってきてから、いい風になってきたかな。

絵理さん:4年以上前からだけど、こちらに拠点を移してから。

笹山さん:高円寺には二十歳ぐらいのころから住んでいて、2回ほど離れたこともあるけどまた戻ってきて。

絵理さん:わたしはまったく高円寺を知らなくて、千葉が実家でほとんど東の方ばかりだったから、高円寺に来て、世界がまったく変わりましたね。

笹山さん:当時は「ZZ TOP」にみんな集まっていたんだけど、一度高円寺を離れてまた戻ってきたときに「ネブラスカ」も知ったんです。入り浸るようになったのが30歳過ぎてからでした。

絵理さん:わたしも6年ぐらい前に連れてきてもらいました。「メビウス」を始めたころだったのかな。

笹山さん:「ネブラスカ」はアコスティックを演ってる人が多かったので、楽しかったですね。だいたい呑んだくれると脱ぐ方でしたからね。(笑)

絵理さん:そのあたりの話はあまりにも有名で・・・。

笹山さん:でも「ネブラスカ」もヤバイ人がだんだん少なくなってきてね。

混沌としてましたからね~。

 

<高円寺のいいところ悪いところ>

 

絵理さん:高円寺のいいところは、高円寺は昔からの仲間が多いっていうのはありますが、そんな中に他所から来たわたしがポコッと入っても、「おお、よく来たな!」っていうぐらい、みんなウエルカムで受け入れてくれる。誰が来てもすぐに仲間に入れてくれるところが高円寺のいいところですよね。
ありがたかったですよね。

笹山さん:オレがいなくっても、エリ嬢が親しいって人も、もう増えましたからね。

絵理さん:最初はどこに行って何したらいいかも判らなかったから、音楽で一緒だったからどこに行くのも連れて行ってもらって顔をつないでもらいましたが、今はひとりでも大丈夫です。

悪いところは特に無いですね。

最初は太い深い人間関係がある中に入っていって新参者が行くとよく判らなくって、入りきれないところがあるけど、それを除けばウエルカムですからね。濃い人間関係の中でも、そのうち薄く溶け込んでいけますからね。

笹山さん:高円寺から離れていたころは、その辺で酔っ払っていると周りがみんな引くんですよ。高円寺では呆れられたことはあるけど引かれたことは無かった。
だから「オレ、高円寺じゃないとダメなんだ~」って思いましたね。(大笑)
高円寺なら問題の無い酔い方でも他の街だと「なんだコイツ」って感じで引かれる。だから自分にとっては水が合う。何度か離れざる得ないこともあったけど、その都度後悔したりして、高円寺はなかなか離れがたいですね。

離れて戻ってきたときには「ネブラスカ」から50mも離れてないところに部屋を借りて「ただいま~」って感じで。

一度感動したのが、具合が悪くなって友人に風邪引いたかなって電話をかけて話をしていたときに、隣りで電話かけていたオネエチャンが、オレの電話のところに風邪薬を置いてパパっと去っていった。
それでオレはオネエチャンの背中越しにカッコイイ~って。(笑)
そういうことが起きる街なんですよね、高円寺って。好きですねぇ~。

あんまり悪いことは無いですね。人に迷惑をかけたことはありますけど(笑)

絵理さん:いい街ですよ、高円寺。住めてよかった。

 

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絵理さん:ふたりのハーモニーが大事なので、ふたりで一緒に演るってことに重きを置いています。演っているのは、ジャンルとかで答えられない音楽ですからね。

笹山さん:「光と影」。音楽は答えのあるものではないから両方を演って、あとは聴く人に任せる。エリ嬢は「光」でオレは「影」で、両方を表現する。そんなつもりで演っています。

 

<あなたにとっての「音楽」とは?一言で>

 

笹山さん:最近、病気もしたので、やっぱり自分には無くてはならないものですね。それは痛感しました。自分にとってすごく大切なものだってことを判りましたね。

絵理さん:今、音楽はもう日常で、無くてはならない生活の一種で、常に音がどこかに無いとって感じですね。音楽が無いと生活が成り立たないぐらいドップリとはまっています。

笹山さん:大病してもいい曲ができていい歌が歌えれば、自分にとってはプラスなんです。

絵理さん:そんなことも言ってたね。がまんするよりも、やりたいことをやって生きた方がいいね。

 

 

高円寺「やじきた2号店」にて 2021.1.23 SAT

取材:木澤聡
写真:小野千明

 

 

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