第四回:横田勇さん

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<高円寺音人の紹介>

 

音楽は音を楽しむものであり、またそれを伝えるものでもある。

また、音を伝えるのは演奏者であるが、音楽を愛する人たちでもある。

語り手がいれば聞き手がいるように、演奏者の伝える音楽の素晴らしさを聴いて理解して、より多くの人に伝える人もいる。

高円寺は、たくさんのミュージシャンを輩出してきた街だ。

高円寺と言う街の環境が自分たちを育んでくれたと、ミュージシャンたちから聞いた。

そしてそこには自分たちの音楽をさらに喚起させてくれる伝道者がいたのだと。

伝説のライブハウス「荻窪ロフト」の元店長が「HEAVEN」というロックバーを経て高円寺に移り、30年以上前にオープンしたエスニック料理店。

店の名前は「バーミィー」。

自らをして「駅から1分の高円寺の秘境」と呼ぶコアな店。

そして店主の横田勇さんは、明らかに高円寺における伝道者のひとりである。

店には1万8千枚とも2万枚とも言われている横田さんの所蔵のレコードの一部が本来客席があった場所にまで置ききれずに溢れている。

壁には自分が21世紀に残したいレコードを持ったお客の写真がビッシリと貼ってある。

店内に流れる空気を吸えば、正しくここは高円寺なのだと思う瞬間だ。

“音楽の伝道者”横田さんに、話を聞いてみたくなったんだ。

                              木澤聡

 

 

<「バーミィー」をオープンするまで>

 

当初サラリーマンをやっていて、よく呑みに行っていた「荻窪ロフト」の平野さんから手伝ってくれないか?と誘われたのが、この世界に入るきっかけでした。

1974年でしたかね。それで正式に入ったときに「西荻窪ロフト」を任されたんです。
「西荻窪ロフト」のオープニングは浅川マキでした。自分が店長を任されていたときは森田童子が最盛期で、入場整理の旗振りをやったりね。(笑)

「荻窪ロフト」は、最後の方はライブもやっていなくて、自分が辞めたあとに店を買ってくれないかって言われたんで、買い取って1980年にロックバー「HEAVEN」を始めたんです。
キャバレーみたいな名前だってよく言われました。(笑)

以前のボロボロだった店を1ヶ月ぐらいかけて自分たちだけでキレイにしたんですよ。テーブルなんかも自分で作って。

その後、今の店「バーミィー」を開いたのが、1987年です。

 

<音楽との関わり、音楽のルーツ>

 

自分で音楽を演ろうと思ったときには、周りの仲間たちがみんな上手かったので、自分では音楽は演っていません。

音楽は小さいころから聴いていましたよ。元々小児喘息で5歳ぐらいまでほとんど寝たっきりだったんです。それでたまたま裏に住んでいたお兄さんがレコード回していたのを聴いたりとかして。
洋楽が多かったと思いますが、住んでいたのが南千住だったので土地柄なのか映画音楽とかの上品な音楽ではなかったかな。(笑)

中学生のときは友人がクラシックギターを演っていたこともあって、クラシックをよく聴いてました。
特にこのジャンルの音楽が好きというタイプではないので、たまたま自分が興味のあるときに聴いていって拡がるみたいな感じです。
昔は今と違って月に10グループぐらいバンドが出てくる感じだったんで、問題なかったんですよ。高校のときはバイトもしてたんで、レコードを手に入れるのは不自由しませんでした。

 

<高円寺との関わり>

 

店は高円寺でやってますが、それ以上の思い入れは高円寺にはないですよ。なにかイベントとかやろうとすれば大変なことになることも判っていますし。

高円寺は昔からも見てきてますが、最近はずいぶんといい街になったと言うか普通の街になりましたね。
4〜50年前とかは怖いところもありましたよ。お祭りのときには、なるべく近寄らないようにするとか。

でも、そのころからミュージシャンは歩いてましたよ。なにか魅力があるんでしょうね、演る側からすると。
柳ジョージさんは、友人がこの先にいるからってよく歩いていましたよ。

みんなたくさん住んでもいたね。アースシェイカーの甲斐くんとか、レッドウォーリアーズとか、デビュー前の吉井くんとか。けっこういますよ。

 

<ママ(佐藤留美子)さんが語る「バーミィー」>

 

高円寺に移ってエスニック料理店を始めた理由?それはひとつです。
「今さらロックだけじゃ、お客は来ないでしょう~。」って、わたしが散々言ったから。(笑)
もう珍しくないだろう、ロックじゃって。

で、始めてみて今となっては、ロックにエスニック料理、なんてミスマッチなんだろうって、そう言われ続けて32年。(笑)

開店当時は、これからは映像だ!って言って、各テーブルに5インチのモニターを置いてPVとか音楽ビデオを流していたんだけど、食べるのに邪魔だっていうことで退けてしまって。すごいお金かけて設備作ったのに、ぜんぜん意味が無かった。(大笑)

モニターで野球見れないのかって人もいれば、なんでレコードかけないって言う人もいたり。お料理だけ食べたい人、レコードだけ聴きたい人、いろんな人が混じりあっているんです、うちの店って。
人生相談に来る人までいて、ホントにいろいろです。

オープン当初は、エスニック料理が食べられる店は、東京にも数軒しかなかったですね。かなり珍しかった。なんで?って言われましたが。(笑)

レコードはもう2万枚は超えたと思います。マスターはある意味マニアなんですね、ディープコレクターと言うか。ジャンルを問わず幅広く。おかげで店も狭くなってしまいましたが。(笑)

           (マスターの横田勇さんとママの佐藤留美子さん)

 

<マスターが言う「バーミィー」の魅力は>

 

わかりません!

店をやっていてひとつ不思議なのは、なぜこの人がこの店に来て、この曲を聴くのかなぁ~って思うことがあるんです。音楽って、人とか年齢とか国とか関係無く、パワーがあるんだなって思うんですよね。

 

<マスターにとっての「音楽」とは?一言で>

 

「血液」、みたいなものですかね。

 

 

高円寺「バーミィー」にて 2019.7.22 MON 

 

取材:木澤聡、北原慶昭
写真:小野千明

 

<「バーミィー」の情報はこちらのリンク先よりご覧ください>

◎ 食べログ:「バーミィー」

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